円七面鳥

不定期

『春にして幻想を離れ』収録作紹介(あまり紹介してない)

toho-mystery.tumblr.com

収録作の紹介記事です。紅楼夢前にやっておけ。

とはいえ私はアンソロジーを読む際にお目当ての作家(短編)以外での幸福な出会いを夢見る読者なので、あんまり中身について語りたくないというのもあります。というわけでこの記事でも内容にはほとんど触れず、「どの作品も面白いよ~」とうさんくさい紹介だけして、自分でもいずれ忘れそうなふわふわとした周辺情報を書き残すにとどめます。そういうのは紹介じゃなくて備忘録っていうんだよ。

 

 

・そもそもこれはどういう合同誌なんですか

 

2017~2019年にかけて毎年発刊されていた「東方ミステリ合同」の精神を勝手に継いだつもりの、書き下ろしの東方ミステリ小説を集めた合同誌です。まとまった量の新たな東方ミステリが読みたい人はそれなりにいるはずだと思ったのです。「東方ミステリ合同」のような公募形式ではなく、主催が執筆者に依頼する形で原稿を書いてもらいました。そのため『東方ミステリ合同4』というナンバリングは避けています。誰か続いてくれ。

 

 

・アラツキ「能ある案山子は罪を隠す

 

アラツキさんは今回の執筆陣の中で唯一、過去のミステリ合同に参加していません。が、「この人ぜってぇミステリ書けるだろ、書いてみてほしいな」という主催のワガママにより編集作業と二足の草鞋を履いてもらいました。

幻想郷の景色の中で人と妖らが活き活きと動き回る、「ああ、東方二次創作だなぁ!」というよろこびに溢れた作品です。作品の収録順を考えるときに10人いたら9人がこれを巻頭に持ってくると思う。この人にミステリ書いてもらったの、慧眼だったでしょ?

 

 

・鍵入たたら「神の火のための茶番劇」

 

ここからは全員「東方ミステリ合同」常連です。

主催はアイデアの大きさの割に力の抜けた小品を書きました。分量的にも箸休めなので、さくっと目を通す感じで「へーほーふーん」となってもらえたらと思います。

いやまあだって、作中の謎の真相は読まずとも分かるじゃないですか?

 

 

・浅木原忍「贋作 全て妖怪の仕業なのか 第五話「屍は二度殺される」

 

今回の執筆依頼にあたっては過去のミステリ合同への寄稿作を踏まえ「この人にはこういう作品を書いて欲しいなぁ」という欲が参加者それぞれにあったのですが、それに縛られず自由にミステリを書いてもらうために、そのことは伝えていませんでした。ですがなんとまあ、蓋を開けてみれば皆さま私が希望する通りの作品を書いてくれたじゃありませんか。マジ感謝です。*1

浅木原さんの場合は「オーソドックスな本格ミステリを書いてくれないかな」でした。丁寧な問題提起、論点の整理、十分な伏線と手がかりという屋台骨に、イメージを喚起させる力の強い真相。これが本格ミステリでございます、と自信をもって紹介できる作品があると、アンソロジー全体の芯がきゅっと引き締まる感じがするのです。

 

 

・黒猫ルキヤ「余命 287,542 kcal

 

「変なミステリ書いてくれないかな」と思って依頼したら変なミステリを書いてくれました。そんなことある? タイトルからして「なにをしてくる気だこの作品は」ってなりますよね。期待通りで逆にびっくりしたその1。

あとがきによると元ネタ本が2冊あるそうで、紅楼夢会場で「なに読んだらアレが出てくるんですか」と直接尋ねたところ、1冊は趣向にダイレクトに関わる作品で「なるほどなー」だったのですが、もう1冊は「そういう内容の本を読んでこういう形で出力されるんですか???」とルキヤさんについての謎が深まるばかりでした。

既読者の中には「そんなに変な内容だったかな?」と疑問に思われる方もおられるでしょうか。ええ、かなり変なことやってますよ。ぜひ考えてみてくださいね。ふへへ。

 

 

・仮面の男「摩擦のない犯罪」

 

依頼時の考えとしては「心理が重視されるようなミステリを書いてほしい」、という言語化が気持ちに近いと思う。真相解明時に「理」以外のところからも深く深く分け入っていくような。アンソロジー全体でミステリとしての振れ幅を持たせたかったんですね。その目論見は果たされたと言っていいんじゃないでしょうか。

ここまで、事件の主役が「人間」ベースの、人里で起きた殺人事件を扱った作品が3本連続で並んでいます。ミステリとしての狙いどころが異なれば要求される書き方も変わってきて、同じ舞台でも3作とも全然違う読み味なのが体験できると思います。

 

 

・銘宮「アリオンのたて琴」

 

「もうこれの後に他の作品を読めないようなミステリを書いて欲しい」と思って依頼したら、そういう作品を書いてもらえました。期待通りで逆にびっくりしたその2。重ねて書きますが、私は執筆依頼時に「東方ミステリであること」以外の指定をしていません。この合同誌自体が「銘宮さんの新作を読みたいがために企画を立てて主催した」というホワイダニットの産物だと疑われやしないか。

このアンソロジーの最後のお楽しみです。この作品の余韻とともに本を閉じられるなんて、この本を手に取る人は幸福ですね。すごい作品だということだけ保証しますので、どうか味わってください。

 

 

・秋例大祭出るよ

 

10/23(日)、ね02a「円七面鳥」で頒布します。お品書きは紅楼夢と同じなので1個前の記事をご確認ください。*2

 

 

・委託もしてるよ

 

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1659301

 

よろしくお願いします。

*1:ちなみに、アラツキさんには「たくさん幻想少女が出てくる話」を書いてくれないかなと期待していました。その通りのものが出てきました

*2:https://mikamae.hatenablog.jp/entry/2022/10/07/073035