叙述トリックとバナナ(略)とアンディファのこと
※下記の文章は「バナナは見ていた(略)」のネタバレを含みます
エゴサしながら思ったことをいちいち思い出しながら書き起こすだけの文章です。とくに全体の構成も結論もないので実のある話を求める人には向かない。『アンディファインドマーダーズ』既読者を想定しているので読んでない人にも向かない。
・個人の姿勢として基本的にネタバレはしたく/されたくない
「ネタバレ」についてはいろいろな議論があるけれど、主にはミステリ読んでるわけだし……これは本題ではないのでそういう前提がある、とだけ。
・ミステリ作品について、叙述トリックが用いられていることを言ってしまうのはネタバレとされる可能性が高い
共通認識といってよい気がする。*1
・みんな叙述トリック好きなんだなぁと思った
自己評価以上に「バナナ(略)」を褒めてもらったので。
(作中の叙述トリックは大したものではない)
・みんな心の哲学的な思考実験好きなんだなぁと思った
自己評価以上に「自律人形の夜」を褒めてもらったので。
(上辺なぞってるだけで、なにか新しい景色や知見を提供できた気はしない)
・みんなひとがひとに向ける抱えきれない感情が好きなんだなぁと思った
自己評価以上に「氷像を抱く」を褒めてもらったので。
(百合はわからなくてもやるしかない。あれを技術で書けるようになれればな、とは思う)
・「バナナ(略)」褒めてもらえるのは嬉しいしありがたいことなんだけれどどこかさめた気持ちもある
いまの自分は「叙述トリックの可能性を信じていたひところ」を過ぎており、「どうやって騙すか」より「騙すことで何をするか」への興味が強い。「バナナ(略)」書いた当時もたぶんそうだった。外枠の叙述トリックは別にメインの仕掛けのつもりでもなんでもなく、「叙述トリックについて語る作品なのだから外枠にも叙述トリックがあれば楽しいだろう」くらいの気持ちだった。このあと外枠の叙述トリックのどこがダメか数行かけて書いたけど素直に騙されて褒めてくれた人の気持ちを否定するみたいでヤだなと思ったので消した。騙すためだけの騙し、意味なし叙述トリックを用いることが許される作品にはなっているとは思う。
作中作の方が苦労したのに雑にくっつけただけの外枠の叙述ばっかり褒めてもらえることに釈然としなかっただけなのかもしれない。そんな気がしてきた。「バナナ(略)」自体は楽しい短編にできたと思っている。
・自作についてネタバレされてもあんまり気にならないことがわかった
主に「バナナ(略)」。外枠の叙述トリックの存在に言及するのは上記の通りネタバレとされる可能性が高いやつだと思う。でも気にならなかった。たまたまそういう性質の内容だったのかもしれない。
・「バナナハシビロコウ」で検索するとハシビロコウの名前がバナナになった元ネタが出てくる
いま検索したら出てきたので。
・『アンディファインドマーダーズ』告知したときのやつ https://twitter.com/key_into/status/1048174573097611264?s=20
告知です。10/21の東方紅楼夢14にて新刊のミステリ短編集を頒布します。今回はなんと「収録作すべてが叙述トリック!?」という前代未聞のコンセプト、仕掛け心に溢れた一冊となっており、タイトルもまさにそのまま『
— 鍵入 (@key_into) October 5, 2018
似鳥鶏『叙述トリック短編集』を踏まえてのネタ。「!?」としたのは収録作全てに叙述トリック用いたわけではないからで、もっというと「バナナ(略)」と「鵺的天鼠」以外は叙述トリックじゃないと思う。「ラテラル」はいわゆる〇〇〇の解説を先にしておきたくてああいう形になっているわけだけれども、あそこにはミスリードの技法はあっても叙述はない、と思うので。「バナナ(略)」で挙げた「その日も空は泣いていた」を、これ一文だけでは叙述トリックと言いたくないのと同じ感覚。
・いま気付いたんですけど「できれば本文読んでからあとがき読んでね」って書いてあんのにあとがきにミスリードまがいの文章仕込むのなんなの?
「自律人形の夜」のこと。
・『アンディファインドマーダーズ』あとがきのあとがき
自分用メモ:https://twitter.com/key_into/status/1065284833180446720?s=20
・はじめまして、「叙述トリックを使うならその内容を推理できる手掛かりも出せ」教の方からきました
「バナナ(略)」:作中作についてはさとりさんに全部言わせた。外枠は、一応ひとつ、作中で回収してないものがある。あるけど齟齬といえるほどのレベルではない……
「鵺的天鼠」:末尾の一行がスタート地点のつもり
https://twitter.com/key_into/status/1048174573097611264?s=20https://twitter.com/key_into/status/1048174573097611264?s=20
https://twitter.com/key_into/status/1048174573097611264?s=20
https://twitter.com/key_into/status/1048174573097611264?s=20
・『アンディファインドマーダーズ』収録作のセルフ解説も兼ねて「叙述トリックを用いたミステリの書き方講座」的な文章を入れることを考えていた
やらなかった。制作時に時間が足りなかった、解説したら正体不明じゃない、講座と銘打つ自信がなかった、あたりが理由。でも、基本だけなら簡単なことで、
step1.「読者に勘違いして欲しい偽の光景」と「真相の光景」を考える
step2.読者に「偽の光景」を思い浮かべてもらうための手段・文章・シーンを考える
step3.「真相の光景」の明かし方を考える
ここを誤認させたい、そのためにこういう方法を採ろう、こうやって演出すれば驚いてくれるだろう。これだけです。
「叙述トリックを用いたミステリ」の先例はたくさんあり、step1~3それぞれに「類型」と呼ばれうるパターンが存在するので、類型をおさえたうえで、どこを類型で済ませ、どこで自分なりの狙いを打ち出すか……というのが腕の見せ所なんだと思うけれども、そういう話はさておいて東方二次創作でミステリと宣言したうえで叙述トリック用いた作品を書いてくれる人が増えないかなという気持ちがあった。
特殊設定の説明描写を一切することなく「透明人間だから気付かれませんでした」をやっていい世界観なんてそうそうあるものではない。東方二次創作でしか味わえないミステリの驚きは絶対にまだまだたくさんある。
(それを求めるだけなら別に叙述トリックでなくてもよくない? かも)
・『十角館の殺人』と『T島事件』が好きなので、手元に戻ってきた壜詰のラブレターを直接届けることに成功した
軛は祝福された。
*1:なぜネタバレとされるのかは「黄金の羊毛亭」さんの「叙述トリック概論」あたりを参照してくださいhttp://www5a.biglobe.ne.jp/~sakatam/text/index.html